【大学入試:化学】2024 北海道大学 第3問 part1

こんにちは。

今回から北海道大学第3問の

解説をしていきます。

 

これまでと同様、第3問は

問題文ⅠとⅡに分かれており、

それぞれ有機化合物と高分子から

出題されています。

 

目次

 

 

 

問1 空欄補充

 有機化合物の元素分析から組成式分子式・示性式を求めるまでの過程を聞かれています。特にア~ウについては以下の通りです。

ア:酸化銅(Ⅱ)は酸化剤としてはたらき、有機化合物を完全燃焼させるために入れます。

イ:ガラス管Xでは水を吸収するために塩化カルシウムを入れます。

ウ:ガラス管Yでは二酸化炭素を吸収するためにソーダ石灰を入れます。ソーダ石灰は水も吸収してしまうため、塩化カルシウムと入れる順番を逆にしてしまうと正確な分析ができません。この注意点はよく問われるので、覚えておきましょう。

 

 

問2 元素分析から分子式を求める

 まず、発生した二酸化炭素に含まれる炭素の質量、水に含まれる水素の質量を求めます。ここから、燃焼前の化合物Aの質量から酸素の質量を求めます。

 次に、炭素:水素:酸素の物質量比を簡単な整数比で求め、組成式を決めます。今回は「C5H12O」となります。

 最後に分子式を求めます。今回は、分子量が100以下であり、組成式の時点で分子量が88であるため、組成式分子式が同一となります。

 

 

問3 異性体の数

① 金属ナトリウムと反応するのはアルコールです。C5H12Oの異性体で、ヒドロキシ基OHをもつものを数え上げます。数え上げるコツとして、炭素骨格を書きだして吟味する方法があります。炭素5個の場合、炭素骨格は3通りです。ヒドロキシ基をつけて異性体を数えましょう。

 

② 「硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液」が出てきたら、酸化反応を考えます。アルコールは級数によって酸化後の物質が変わってきます。

 「級数」とは、ヒドロキシ基に結合している炭素原子に結合している炭素原子の数です。第1級から第3級まであります。それぞれ酸化反応は以下の通りです。

アルコールの酸化反応

 第1級アルコール → アルデヒド → カルボン酸

 第2級アルコール → ケトン

 第3級アルコール → 酸化しない

 

 今回はカルボン酸にならないものを数え上げるので、第2級、第3級アルコールを答えます。

 

 

問4 AとCの構造決定

 問題文から情報を整理します。

■ 化合物A~Cの情報 ■
・A~Cは構造異性体→すべて分子式はC5H12O
・すべて金属ナトリウムと反応→すべてアルコール 
・A、Bはヨードホルム反応を示す
・Aは枝分かれ構造、Bは直鎖構造
・Cは不斉炭素原子をもつ第1級アルコール

 

 ヨードホルム反応を示すことから、CH3-CH(OH)-をもつので、残りの炭化水素基が枝分かれ型、直鎖型になるものがそれぞれA、Bとなります。

 Cはヨードホルム反応を示さず、不斉炭素原子をもつ第1級アルコールになります。第1級アルコールなのでR-CH2-OH(Rは炭化水素基)をベースに不斉炭素原子をもつように構造式を考えます。

 不斉炭素原子を表すときは、問題文の指示に従いましょう。示さなくていいこともありますし、「*」で示すことが多いです。今回は不斉炭素原子を「〇」で囲みましょう。

 

 

問5 正誤問題

 誤りをすべて選ぶので、一つずつ吟味していきましょう。

(て)ギ酸はH-C(CO)-OHです。カルボン酸でありながら、ホルミル基を併せもつ化合物であるため、還元性を示します。また、ギ酸は過マンガン酸カリウム水溶液によって二酸化炭素と水になります。(過マンガン酸カリウムによるアルケンの酸化で出てきます。)

 

(と)アニリンさらし粉によって赤紫色に呈色します。また、フェノールは塩化鉄(Ⅲ)によって赤~紫色に呈色します。

 ちなみに、「さらし粉」は無機化学(典型金属元素)で登場します。さらし粉の化学式は「CaCl(ClO)・H2O」、高度さらし粉は化学式で「Ca(ClO)2・2H2O」になります。

 

(な)フェノールは炭酸・二酸化炭素よりも弱酸になります。よって、フェノールに炭酸水素ナトリウムを加えても遊離は起きません。

 

(に)単糖は水溶液中で環状構造と鎖状構造の平衡状態にあります。鎖状構造にはホルミル基があるため、還元性を示します。

 

(ぬ)アルカンと塩素は光を照射することで爆発的に反応します。このとき、置換反応が起きています。

 

(ね)アルケンに臭素を吹き込むと、付加反応が起こります。臭素溶液は褐色であるため、無色になることでアルケンの検出に利用されます。

 

 

【まとめ】

 今回は有機化合物について見てきました。有機でまず覚えるべきは、官能基とその性質です。有機化合物の特徴は少ない元素にも関わらず化合物の種類が多いことです。これらの性質は官能基の影響を大きく受けます。検出反応も含めて覚えていきましょう。