【東北大学】2024 化学 第3問


こんにちは。

今回は東北大学

第3問構造決定を取り上げます。

 

第1・2問とは違い、

文章は1つですので、

この記事で全て解説していこうと思います。

 

割と長めですが、

最後まで見ていただければと思います。

 

 

目次

 

 

【問題文からの情報】

 問題文にある情報をまとめていきます。

 

■前提
・化合物Aは炭素C、水素H、酸素O、窒素Nで構成されている。
・化合物Aは不斉炭素原子を2つもち、いずれも第4級炭素原子ではない。
 
■実験1
・Aを加水分解すると、分子量が200以下のB、C、Dが得られた。
・Cのみ不斉炭素原子を1つもつ。
 
■実験2
・B~Dのエーテル溶液に希塩酸を加えて振ると、エーテル層からCとDが残った。このエーテル層に炭酸水素ナトリウムを加えて振ると、エーテル層にCが残った。
 
■実験3
トルエンに対して、濃硝酸と濃硫酸の混合物を作用させると、2つの異性体を含む混合物が得られた。
・片方の異性体に濃塩酸中でスズを作用させ、NaOH水溶液を加えるとBが得られた。
 
■実験4
・Bの希塩酸溶液を氷冷しながら、これに亜硝酸ナトリウム水溶液を加えると、Eが得られた。Eを加熱するとFが得られた。Fを塩化鉄(Ⅲ)水溶液に加えると、青色の呈色が観察された。
 
■実験5
・Eにナトリウムフェノキシドを加えると、橙赤色のGとNaClが得られた。
 
■実験6
・Fを酸化すると、Hが得られた。Hは、ナトリウムフェノキシドに高温・高圧下で二酸化炭素を反応させ、希硫酸を作用させると得られる。
 
■実験7
・39mgのCを完全燃焼させると、110mgの二酸化炭素と45mgの水が得られた。
 
■実験8
・Cに金属Naを加えると水素が発生した。Cを酸化すると得られたIは銀鏡反応を示した。
 
■実験9
・Cを脱水すると、分子量が18減少したJが得られる。Jは不斉炭素原子をもたない。
 
■実験10
・Jに硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液を加えると、Dが得られた。同時に、Dの2倍の物質量の二酸化炭素も同時に発生した。
 
■実験11
・Cに水素を付加すると、分子量が2.0増加したKが得られた。Kは不斉炭素原子をもたない。
 
■実験12
・Dを脱水すると、分子量が18減少したLが得られた。Lは6原子からなる環を含む。
 
■実験13
・Dはエチレングリコールと縮合重合し、高分子Mを生成した。

 

問1 実験3の異性体

 トルエンニトロ化です。ここで生成する異性体はメチル基に対してニトロ基がオルト位、メタ位、パラ位のいずれかに置換します。しかし、「主に2種類」なので、「配向性」を考慮する必要があります。

 

配向性

 置換基によって、更に置換する場所に傾向がある。これを配向性という。

① メチル基やヒドロキシ基はオルト位、パラ位に置換しやすい。

② ニトロ基やカルボキシ基はメタ位に置換しやすい。

 

 よって、oニトロトルエンpニトロトルエンが主に生成します。

 

問2 Hの構造式

 実験6より、ナトリウムフェノキシドに高温・高圧下で二酸化炭素を反応させ、希硫酸で処理をするとサリチル酸が生成します。

 

問3 実験3下線部bの反応

 ニトロ基の還元反応を書きます。ニトロ基からアミノ基への還元反応、スズSnから塩化スズ(Ⅳ)SnCl4への酸化反応の半反応式は次の通りです。

 R-NO2 + 6H+ + 6e- → R-NH2 + 2H2O + 6e-

 Sn → Sn4+ + 4e- 

ここから電子を消去し、塩化物イオンCl-を補っていきます。

 さらに化合物Bの構造式と特定していきます。

 実験4より、Bをジアゾ化し、加熱するとFが得られます。つまり、Bのアミノ基がヒドロキシ基に変化するとFになるということですね。

 次に実験6より、Fを酸化するとH:サリチル酸が生成します。

 よって、Bはoニトロトルエンを還元したアミンだということが分かります。

 

問4 Gの構造式

 Eをジアゾ化し、ナトリウムフェノキシドとカップリング反応を起こします。

 

問5 CとJの分子式

 実験7より、元素分析をすることでCの組成式を求めると、C10H20Oとなります。この時点で分子量は156であるため、分子式C10H20Oのままです。

 Cを脱水するとJになるため、Jの分子式C10H18になります。

 

問6 Cの構造式

 実験8より、Cを酸化することで得られたIが銀鏡反応を示すことから、Cは第1級アルコールです。

 また実験9より、脱水することで得られたJは不斉炭素原子をもたず、実験10よりCに水素を付加させたKにも不斉炭素原子がないことから、J・Kは対称性のある化合物です。

 更に、Jに過マンガン酸カリウムで酸化すると得られるDは2価カルボン酸であり、脱水すると酸無水物Lが生成します。この化合物Lは6原子からなる環をもつため、2つのカルボキシ基の間には炭素原子が3つあるように組み立てていきます。

 以上の条件を満たすようなD・J・Kが分かれば、自ずとCの構造式も求められます。

 

 

 

問7・8 化合物Dの構造式、化合物L

 問6より導くことができます。

 

 

問9 高分子Mの構造式

 エチレングリコールは2価カルボン酸であるテレフタル酸と縮合重合することでポリエチレンテレフタレートを生成します。テレフタル酸を化合物Dに置き換えて高分子を作ります。

 

 

問10 エステル結合の個数

 問9より、高分子Mの平均分子量を求め、重合度を出します。繰り返し単位中にエステル結合が2つあるため、エステル結合の数は重合度の2倍になります。

 

 

問11 化合物Nの構造式

 炭素-炭素二重結合が過マンガン酸カリウムの酸化によってカルボキシ基に変化することから化合物Nを導くことができます。

 

 

問12 化合物Aの構造式

 問7まで答えられれば、A・B・Cを組み合わせます。

 

 

【まとめ:総評】

 今回で東北大学の入試解説は終了です。全体を通して、第1問・第2問は比較的基本レベルの問題だったかと思います。ところどころ最後まで計算しきれるかは経験の差が出るでしょう。また、第3問は少し時間をかかりますが、ぜひとも解ききってほしいものでした。

 東北大学有機を筆頭に良問が多いため問題集などによく取り上げられます。旧帝大・医学科を目指す人はもちろん、化学を得点源にしたい人は何年分か取り組んでみると力がつくと思います。