【名古屋大学】2024 化学 第3問 part2

こんにちは。

前回に引き続き、名古屋大学第3問を見ていきます。有機後半は天然高分子からアミノ酸異性体についてです。分子模型があれば分かりやすいですが、試験中はそんなこと言ってられないので、頑張って頭の中でぐるぐる回しましょう。

 

目次

 

問1 酵素の性質

 語句問題は落とせません。覚えておきましょう。

 

 

問2 化合物A・Bの構造式

 L-トレオニンに対してこの酵素を作用させるとアミノ基とカルボキシ基が結合している炭素原子のみで変換反応が起こり、化合物Aが生成します。同様に、D-トレオニンからは化合物Bが生成します。

 

 L-トレオニン、D-トレオニンと化合物A、Bは同じ化合物でなければ、鏡像異性体でもありません。このような立体異性体を「ジアステレオ異性体」といいます。トレオニンには不斉炭素原子が2つあるため、立体異性体は22=4つあることになります。

 解答は置換基の向きが指定されているため、図のように書き直すことに注意してください。

 

 

問3 化合物AとBの関係

 ジアステレオ異性体どうしは鏡像異性体です。

 

 

問4 アラニンのジペプチドの立体異性体

(お) LL体とDD体は鏡像異性体、LD体とDL体は同一の分子であるため、ジアステレオ異性体ではありません。

 

(か) 鏡像異性体うしの融点は同じです。

 

(き) DL体はLD体の鏡像ですが、同じ化合物です。このように鏡像の化合物と同一になるような化合物を「メソ体」といいます。

 メソ体を見分ける方法は、「分子内に対称面があるかどうか」という説明をよく見かけます。前回、東大の問題でも同じことを書いたかと思います。しかし、今回のジペプチドには対称面がありません。

 実は、「分子内に対称面がある」以外にもメソ体となる条件があります。今回、LD体を環の中心軸周りに180°回転させ、その回転軸に垂直な面に対する鏡像を見ると元のLD体と同じになります。このような操作を「回映」といいます。そして回映体が元の化合物と一致する場合、メソ体となります。

 

 

問5 アラニンのテトラペプチドの立体異性体

 メソ体を意識しながら数え上げていきます。

 

 アミノ基とカルボキシ基をいちいち書くのは面倒なので、矢印で表現するといいと思います。鏡像体を元の化合物の矢印の向きと揃えようとしたときにL体・D体が一致するかを確認します。図中の右2つの化合物についてはL体・D体をスライドさせると鏡像体と元の化合物が同一であることが分かるかと思います。

 

問6 環状ペプチドとアラニンの区別とその理由(問7)

 選択肢内でアラニンが呈色する反応はニンヒドリン反応のみです。

 

有機検出反応

ニンヒドリン反応:アミノ基-NH2の検出

■キサントプロテイン反応:ベンゼン環の検出

■銀鏡反応:アルデヒドの検出

■ビウレット反応:トリペプチド以上の検出

 

 環状ペプチドはアミノ基がすべてペプチド結合に使われているため、ニンヒドリン反応を示すことができません。

 

 

【まとめ:総評】

 今回で名古屋大学の解説は以上となります。難易度としては、第1・2問は問題数も比較的少なく、内容も基礎~標準といった感じです。第3問前半(6)の構造決定、第3問後半の異性体については、経験をしていないと気付かないこともあったと思います。問題集を積んでいれば高得点は狙えますね。教科書にあまり書いていない内容も資料集には載っていたりします。化学で疑問や知らない単語が出てきたら、資料集で調べる癖をつけましょう。