【大学入試:化学】2024 北海道大学 第3問 part2

こんにちは。

今回も引き続き

北海道大学第3問を見ていきます。

 

問題文Ⅱの内容は高分子化合物です。

履修時期が夏休み後になることが多く、

受験本番までに仕上げきれない人も

多いと聞く分野です。

整理して学習を進めれば、そこまで

難しい内容ではないため、

焦らず勉強していきましょう。

 

目次

 

問1 付加重合

 高分子化合物は重合反応によってつくられます。中でも「付加重合」はアルケンなどの不飽和結合のうち一つの結合が切断され、隣の分子と新たな共有結合をつくる重合反応です。今回の場合、(ⅰ)ポリエチレン、(ⅲ)ポリスチレン、(ⅳ)ブタジエンゴムが該当します。

 (ⅱ)ポリエチレンテレフタラート、(ⅵ)ナイロン66は合成の際に水が脱離します。このように小さい分子が脱離する重合反応を「縮合重合」といいます。

 

 

問2 付加縮合

 付加重合と縮合重合の両方を起こすものを「付加縮合」といいます。主に熱硬化性樹脂でみられます。(ⅷ)フェノール樹脂、(ⅸ)尿素樹脂、(ⅹ)メラミン樹脂が該当します。

 

 

問3 ポリビニルアルコールの原料

 ポリビニルアルコールはビニロンを合成する重要物質です。ビニルアルコールを付加重合したような化合物ですが、実際はビニルアルコールからは合成されません

 アセチレンに水を付加させるとビニルアルコールが一時的に生成されます。しかし、ビニルアルコールは不安定な化合物であり、すぐさまアセトアルデヒドになります。

 そこで、アセチレンに酢酸を付加させることで酢酸ビニルを合成し、付加重合させます。ここで生成した(ク)ポリ酢酸ビニルをけん化することでポリビニルアルコールが生成します。最後にホルムアルデヒドによってアセタール化することでビニロンを得ることができます。

 

 

問4 ナイロン6の合成

 ナイロン6は「ε-カプロラクタム」を開環重合することで得られます。「ラクタム」とは環状アミドのことであり、-NH-CO-を構造にもちます。

 

 

問5 低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン

 ポリエチレンは条件によって密度が変化します。

 

ポリエチレンの合成

<低密度ポリエチレン>

 高圧下・200℃前後で微量の酸素などを触媒として合成されます。ポリエチレン分子を雑に詰めていくイメージです。枝分かれが多いため、密度が低く、透明度が高いのが特徴です。用途としてポリ袋があります。

 

高密度ポリエチレン

 低圧下・60℃前後でチーグラー・ナッタ触媒を用いて合成されます。ポリエチレン分子をゆっくり敷き詰めていくイメージです。よって、密度が高く、透明度が低いのが特徴です。用途としてポリ容器があります。

 

■チーグラー・ナッタ触媒

 トリエチルアルミニウムAl(C2H5)3と塩化チタン(Ⅳ)TiCl4を組み合わせた触媒であり、この触媒を発見し、付加重合を常圧下で成功させたチーグラーとナッタは1963年にノーベル化学賞を受賞しました。

 ここで出てきた「トリエチルアルミニウム」のような金属と炭素が結合した化合物を「有機金属化合物」といい、チーグラーとナッタの研究は有機金属化学の展開へのきっかけとなりました。

 

 

問6 ナイロン66の合成

 「ナイロン66」はヘキサメチレンジアミンアジピン酸を縮合重合することで得られる合成高分子です。それぞれの単量体の素数が6個であるため、ナイロン「66」と呼ばれます。

 高校の化学実験でも扱われ、どんどんナイロン66を引っ張り上げることのできる大変面白い実験です。この反応を起こしやすくするために、また、ヘキサメチレンジアミンとの境界面をはっきりさせるためにアジピン酸ジクロリドを利用することがあります。アジピン酸ジクロリドはアジピン酸のカルボキシ基-COOHが-COClに変化した化合物ですが、アジピン酸と同様、縮合重合を起こします。

 アジピン酸の場合、水が脱離しますが、OHがClに変化したため、塩化水素HClが脱離します。よってこの塩化水素を中和するために水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを予め加えておきます。

 

 

問7 アセテート繊維

 アセテート繊維は半合成繊維の一種です。「半合成繊維」は化学繊維の仲間ですが、繊維についてまとめてみます。

 

天然繊維・化学繊維

■天然繊維

①植物繊維:セルロース(木綿、麻)

②動物繊維:タンパク質(羊毛、絹)

 

■化学繊維

①再生繊維:天然繊維を溶解し、再び紡糸したもの → レーヨン

②半合成繊維:天然繊維に置換基を結合させたもの → アセテート

③合成繊維:合成高分子化合物を紡糸したもの → ナイロン、ポリエステルなど

 

 

 アセテートは天然繊維であるセルロース無水酢酸氷酢酸などでアセチル化し、エステル結合の一部を加水分解することで得られるジアセチルセルロースを主に指します。

 今回は、そのジアセチルセルロースの構造式を選択肢から選びます。セルロースは「β-グルコース」がグリコシド結合によって重合した高分子であり、そのヒドロキシ基の一部をアセチル化したものがジアセチルセルロースです。よって、(れ)が答えになります。

 (よ)、(ろ)はガラクトース、(り)はα-グルコースです。また、(ら)はトリアセチルセルロース、(る)はニトロセルロースになります。

 

 

【まとめ:総評】

 今回で2024 北海道大学入試(前期)の解説は以上になります。

 第1問、第2問での計算に時間がかかってしまう印象があり、時間配分に気をつけなければいけないセットだったと思います。一方、第3問は比較的易しく、構造決定も分かりやすいものでした。出題内容としてはとりわけ難解なものも見当たらないので標準レベルの問題集をじっくり取り組んでいれば十分だと思います。

 

 いかがだったでしょうか。リクエストや修正箇所などございましたら、お気軽にコメントをいただければと思います。