こんにちは。
今回も引き続き
北海道大学第3問を見ていきます。
問題文Ⅱの内容は高分子化合物です。
履修時期が夏休み後になることが多く、
受験本番までに仕上げきれない人も
多いと聞く分野です。
整理して学習を進めれば、そこまで
難しい内容ではないため、
焦らず勉強していきましょう。
目次
- 問1 付加重合
- 問2 付加縮合
- 問3 ポリビニルアルコールの原料
- 問4 ナイロン6の合成
- 問5 低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン
- 問6 ナイロン66の合成
- 問7 アセテート繊維
- 【まとめ:総評】
問1 付加重合
高分子化合物は重合反応によってつくられます。中でも「付加重合」はアルケンなどの不飽和結合のうち一つの結合が切断され、隣の分子と新たな共有結合をつくる重合反応です。今回の場合、(ⅰ)ポリエチレン、(ⅲ)ポリスチレン、(ⅳ)ブタジエンゴムが該当します。
(ⅱ)ポリエチレンテレフタラート、(ⅵ)ナイロン66は合成の際に水が脱離します。このように小さい分子が脱離する重合反応を「縮合重合」といいます。
問2 付加縮合
付加重合と縮合重合の両方を起こすものを「付加縮合」といいます。主に熱硬化性樹脂でみられます。(ⅷ)フェノール樹脂、(ⅸ)尿素樹脂、(ⅹ)メラミン樹脂が該当します。
問3 ポリビニルアルコールの原料
ポリビニルアルコールはビニロンを合成する重要物質です。ビニルアルコールを付加重合したような化合物ですが、実際はビニルアルコールからは合成されません。
アセチレンに水を付加させるとビニルアルコールが一時的に生成されます。しかし、ビニルアルコールは不安定な化合物であり、すぐさまアセトアルデヒドになります。
そこで、アセチレンに酢酸を付加させることで酢酸ビニルを合成し、付加重合させます。ここで生成した(ク)ポリ酢酸ビニルをけん化することでポリビニルアルコールが生成します。最後にホルムアルデヒドによってアセタール化することでビニロンを得ることができます。
問4 ナイロン6の合成
ナイロン6は「ε-カプロラクタム」を開環重合することで得られます。「ラクタム」とは環状アミドのことであり、-NH-CO-を構造にもちます。
問5 低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン
ポリエチレンは条件によって密度が変化します。
問6 ナイロン66の合成
「ナイロン66」はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を縮合重合することで得られる合成高分子です。それぞれの単量体の炭素数が6個であるため、ナイロン「66」と呼ばれます。
高校の化学実験でも扱われ、どんどんナイロン66を引っ張り上げることのできる大変面白い実験です。この反応を起こしやすくするために、また、ヘキサメチレンジアミンとの境界面をはっきりさせるためにアジピン酸ジクロリドを利用することがあります。アジピン酸ジクロリドはアジピン酸のカルボキシ基-COOHが-COClに変化した化合物ですが、アジピン酸と同様、縮合重合を起こします。
アジピン酸の場合、水が脱離しますが、OHがClに変化したため、塩化水素HClが脱離します。よってこの塩化水素を中和するために水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを予め加えておきます。
問7 アセテート繊維
アセテート繊維は半合成繊維の一種です。「半合成繊維」は化学繊維の仲間ですが、繊維についてまとめてみます。
アセテートは天然繊維であるセルロースに無水酢酸や氷酢酸などでアセチル化し、エステル結合の一部を加水分解することで得られるジアセチルセルロースを主に指します。
今回は、そのジアセチルセルロースの構造式を選択肢から選びます。セルロースは「β-グルコース」がグリコシド結合によって重合した高分子であり、そのヒドロキシ基の一部をアセチル化したものがジアセチルセルロースです。よって、(れ)が答えになります。
(よ)、(ろ)はガラクトース、(り)はα-グルコースです。また、(ら)はトリアセチルセルロース、(る)はニトロセルロースになります。
【まとめ:総評】
今回で2024 北海道大学入試(前期)の解説は以上になります。
第1問、第2問での計算に時間がかかってしまう印象があり、時間配分に気をつけなければいけないセットだったと思います。一方、第3問は比較的易しく、構造決定も分かりやすいものでした。出題内容としてはとりわけ難解なものも見当たらないので標準レベルの問題集をじっくり取り組んでいれば十分だと思います。
いかがだったでしょうか。リクエストや修正箇所などございましたら、お気軽にコメントをいただければと思います。