【名古屋大学】2024 化学 第3問 part1

こんにちは。

今回は名古屋大学第3問になります。第3問は大きく2つに分かれているので、記事を分けてお送りします。

 

目次

 

問1 化合物Aの構造式

 アセチレンC2H2臭素Br2を過剰量付加させるので、炭素間は飽和結合になり、それぞれ臭素原子が2つずつ結合した1,1,2,2-テトラブロモエタンになります。

 

 

問2 同位体の割合

 アセチレンC2H2の分子量は26であり、同位体の組合せによって以下の分子量をもつ分子ができます。

 (ア) 79Brが4つ ⇒ 分子量:342

 (イ) 79Brが3つ、81Brが1つ ⇒ 分子量:344

 (ウ) 79Brが2つ、81Brが2つ ⇒ 分子量:346

 (エ) 79Brが1つ、81Brが3つ ⇒ 分子量:348

 (オ) 81Brが4つ ⇒ 分子量:350

 

① (ア)の分子量は342です。

② Brの同位体それぞれの存在確率は50%ずつであるため、79Brを4つ集めると( 1 2 )4 = 1 16  ⇒ 6.25%になります。

③ 79Brを2つ、81Brを2つ集めるとき注意点が一つあります。それは臭素Brを選び出す組合せを考えるからです。数Aのように考えるといいと思います。

 

 79Br原子と81Br原子が1つずつ入っている袋から原子を一つ取り出します。質量数を確認してから、原子を袋に戻します。この操作を4回繰り返し、出てきた4つのBr原子でテトラブロモエタンをつくったとき、(ウ)のようになる確率は?
 
 こんな感じの問題であれば「組合せ」が思いつくでしょう。実際、取り出す順番が「79→79→81→81」でも「79→81→79→81」でも分子量は(ウ)と同じになります。結果、組合せは42=6通りになるので、6×( 1 2 )4  ⇒ 37.5%になります。
 
 

問3 化合物Bの分子式

 元素分析です。分子量が100以下であることで分子式まで決まるかと思います。

 

 

問4 化合物C、Dの構造式

 問3より、化合物Bの分子式はC5H8と決まり、炭素-炭素三重結合をもちます。この時点でBは2種類です。

 水を付加させると図1のようにカルボニル化合物ができます。化合物C・Dはいずれも銀鏡反応を示さないことからケトンのみができる方がBとなります。C・Dを還元すると、それぞれ不斉炭素原子をもつ化合物Eともたない化合物Fができるので、それぞれ構造式が定まります。

 

 

問5 ヨードホルム反応を示す化合物

 ヨードホルム反応を示す構造をもつものを選びます。

 

 

問6 化合物Gの構造式

 問題文より、Gの分子式がC8H12であることが分かっています。ここで、「不飽和度」について考えると、構造式を見つけやすくなります。

 

不飽和度

 不飽和度とは、二重結合や三重結合のような不飽和結合、環構造の数を表す値である。「二重結合が1つ」「環構造が1つ」だと不飽和度は1となり、「三重結合が1つ」だと不飽和度は2である。

 例えば、アセチレンは三重結合が1つなので不飽和度2、シクロヘキセンは二重結合が1つ、環構造が1つなので不飽和度2となる。

 

 分子式から不飽和度を求めることができる。CnHmOl場合、不飽和度Xは次のように表すことができる。

  X =  2n-m+2 2

 

 窒素、ハロゲンがある場合、少し変わってきますが基本的にC、H、Oの3元素が含まれることがほとんどなので、ぜひ覚えておくと手掛かりとして使えます。

 今回の場合、C8H12の不飽和度は「3」であり、水分子が1つしか付加しないことから、三重結合の他に環構造をもつことが分かります。よって、シクロオクチンが答えになります。

 

 

【まとめ】

 今回はアルキンへの水の付加反応についてでした。不飽和結合に水が付加するとヒドロキシ基が結合しますが、三重結合の場合、ビニルアルコールに似た構造ができ不安定であるため、図1のようなカルボニル化合物に異性化します。難関大ではこの異性化を踏まえて構造決定させるものもあるので、ぜひ覚えておきましょう。