【東京大学】2024 化学 第3問 part2

こんにちは。

今回で東京大学最終パートになります。最後は「電離平衡・緩衝液」になります。

 

目次

 

 

問オ 緩衝作用を示す理由

 「緩衝作用」とは、酸や塩基を少量加えてもpHに大きな変化が現れないことを指します。酸(H+)を加えると、リン酸二水素イオンH2PO4の電離平衡が左に移動するため、水素イオンは増えたことになりません。また、塩基(OH)を加えるとH2PO4との中和反応が起こるため、これまた水酸化物イオンは増えたことになりません。以上から緩衝作用を示す理由になります。

 「中性付近で」とありますが、pH7のとき電離定数Ka2よりリン酸二水素イオンH2PO4とリン酸水素イオンHPO42-の濃度がほとんど等しくなり、緩衝作用がより強い条件になります。

 

 

問カ 第二中和点のpH

 0.0100mol/Lのリン酸H3PO4水溶液10.0mL、0.0100mol/Lの水酸化ナトリウムNaOH水溶液20.0mLを混合すると、次のように二段階で反応が起こります。

  H3PO4 + NaOH → NaH2PO4 + H2O

  NaH2PO4 + NaOH → Na2HPO4 + H2O

よって、混合水溶液30.0mLの中にリン酸水素二ナトリウムNa2HPO4が0.0100×10-2 mol生成したことになります。リン酸水素二ナトリウムは水溶液中で完全に電離し、リン酸水素イオンHPO42-が1.00×10-4 mol溶けていることになります。ここで、リン酸水素イオンの加水分解を考えます。

  HPO42- + H2O ⇄ H2PO4 + OH

 このとき生成する水酸化物イオン濃度[OH]は、加水分解定数Kh、リン酸水素イオン濃度[HPO42-]を使って次のように表されます。

  [OH]=√[HPO42-Kh

加水分解定数Khは第二電離定数Ka2と水のイオン積KWで表すことができ、[OH]を求められます。常用対数にしてpHまで求めましょう。

 

 

問キ 電離定数の値

 問オの後半でも触れたとおり、最も緩衝作用が強くなる条件は2つのイオン濃度が等しくなるときです。よって、pH5において[H3PO4]=[H2PO4]となるため、[H+]=Ka1となるような酸を使えば良いのです。

 

 

問ク pH7の緩衝液の調製

 図3-3より、pH7は第一中和点と第二中和点の間になります。加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積をxmL加えたときのH2PO4HPO42-の物質量を求め、第二電離定数Ka2の式に代入して[H+]を求めていきます。

 第一中和点までに水酸化ナトリウムは10mL分反応しているので、下の解説では水酸化ナトリウムがx-10 mL反応したことにしています。

 

 

問ケ 緩衝液を冷やしたときのpH

 水の電離は発熱反応・吸熱反応のどちらでしょうか。ここで思い出すのが「中和熱は正」であることです。すなわち、「中和反応⇒水の生成」は発熱反応であるため、逆反応である水の電離吸熱反応になります。

 ルシャトリエの原理より、水溶液を冷やすことで水の電離平衡は発熱反応の方向、つまり水の生成方向に移動するため、水素イオンの量(濃度)は小さくなります。結果、pHは大きくなると言えます。

 

 

【まとめ:総評】

 今回で東京大学の解説は以上となります。全体的に思考力が問われる問題が多く、幅広い知識・最後まで解き切る計算力が必要に感じます。問われていること自体難しいものは少ないですが、いかに素早く情報を処理するかがカギですね。

 東京大学は問題集ではあまり見かけない題材を取り上げることもあります。東大を目指す人も、そうでない人も経験値を得るには十分な過去問がいっぱいありますので、ぜひ挑戦してみてください。