こんにちは。
前回に引き続き、東京大学第2問の後半を見ていきます。無機の中でもあまり取り上げられない金Auについての問題です。見られない題材の場合、推察力が求められます。落ち着いて考えれば答えまで辿り着けます。
目次
問ク 空欄補充
単位格子中の原子数が4より、金Auや銀Agは(a)面心立方格子であることが分かります。また、金は銀より(b)イオン化傾向が小さく、酸化されにくい性質があります。例えば、銀は硝酸、熱濃硫酸に溶かすことができますが、金は王水(濃硝酸と濃塩酸の混合物)などでしか溶かすことができません。
問ケ 金の溶解反応
酸化還元反応は、それぞれの半反応式を書いて組み合わせることで作り出すことができます。今回は、金のイオン化(酸化)と三ヨウ化物イオンI3-がヨウ化物イオンに還元する半反応式から書いていきます。
③ I3- + 2e- → 3I-
また、1価の金イオンは直線型の錯イオンであるため配位数は2、3価の金イオンは平面正方形型の錯イオンであるため配位数は4になります。
ヨウ化物イオンが足りない場合、両辺に同じ数ずつ加えていけば大丈夫です。
問コ 平衡定数
図2-1での特異点である[Ag+]=[[Ag(NH3)2]+]=40%に注目しましょう。このとき、[[Ag(NH3)]+]=20%より、[Ag+]:[[Ag(NH3)]+]:[[Ag(NH3)2]+]=2:1:2と求められます。これを使って、式⑤の平衡定数Kに代入して[NH3]を求めます。
あとは、K1、K2に先ほどの各イオンの比と[NH3]を代入することで求められます。
問サ 沈殿Eの化学式
合金に含まれる銀Agの物質量と沈殿Eの物質量は等しいことを利用します。王水中には塩化物イオンが含まれているため、沈殿が塩化銀AgClであることは容易に推測できますね。
問シ 電気分解に要する時間
亜硫酸イオンが硫酸イオンに変化するために必要な電子の物質量と、金イオンAu3+が金単体に還元するために必要な電子の物質量は等しくなります。この量の電子を流すためにかかる時間をファラデーの電気分解の法則から求めていきます。
【まとめ】
今回のようにあまり触れられない元素であっても、推察力で解けるものはよくあります。金の錯イオンを知らなくても「直線型」であれば銀の錯イオン、「平面正方形型」であれば銅の錯イオンと類似であることから予測することができます。また、グラフから濃度の割合を読み取る問題もよく出てきます。
「東大」と聞くと「難しい」「解けるはずがない」と思いがちですが、意外と基本的なことを組み合わせて解くこともできますし、良問も多くあります。ぜひ挑戦してみてください。