【大阪大学】2024 化学 第3問 part1

こんにちは。

今回は大阪大学第3問の解説をしていきます。範囲は有機分野、中でも分離操作についてです。有機実験の定番ですが、なかなか高校の授業で実施されない実験ですね。動画などを見つけて、イメージしながら定着させていきましょう。

 

目次

 

問1 化合物A~Cの構造式

 実験内容をまとめていきます。

 

■情報
芳香族化合物A~Eはベンゼン環上に1つだけ置換基をもつ。
・化合物A~Eを含むジエチルエーテル溶液を塩酸によって分離させ、下層に水酸化ナトリウム水溶液を加えると、化合物Aが遊離した。
・化合物Aは元素分析によって、炭素77.4%、水素7.50%、窒素15.1%と分かった。
・分離後の上層に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると、更に二層に分離した。下層に塩酸を加えると、化合物Bが白色固体として遊離した。
・化合物Bは元素分析によって、炭素、水素、酸素から構成されており、122mgを完全燃焼させると、二酸化炭素308mg、水54.0mgが得られた。 
・分離後の上層に水酸化ナトリウム水溶液を加えると、更に二層に分離した。下層に塩酸を加えると、化合物Cが油状となって浮かんだ。
・化合物Cは塩化鉄(Ⅲ)水溶液と反応して紫色に呈色した。
・分離後の上層から溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーによって化合物DとEに分離した。
・化合物Eを導線に付けて炎に入れると、青緑色の炎色反応を示した。

 

 まず、最初に塩酸と反応して塩となった化合物Aはアニリンだと推測されます。元素分析の結果から、それが適当か確認できます。

 次に、炭酸水素ナトリウム水溶液と反応して塩となった化合物Bは安息香酸だと推測されます。こちらも、元素分析の結果から確認できます。

 最後に、水酸化ナトリウム水溶液と反応し、塩化鉄(Ⅲ)水溶液によって呈色反応を示したことから、化合物Cはフェノールであると推測されます。

 いずれも置換基が1つしかないので、推測・決定は容易ですね。

 

 

問2 ジエチルエーテルと水の密度

 ジエチルエーテルは水よりも密度が小さいため、上層となります。そもそも下線部①について、下層にアニリン塩酸塩が溶けていることから、下層が水であることは分かりますね。

 

 

問3 ガスF

 炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を加えると、安息香酸(化合物B)・フェノール(化合物C)いずれも中和されて塩になります。ここにガスFを加えると、安息香酸(化合物B)のみ塩のままであるため、カルボン酸より弱い酸でフェノールを遊離させる必要があります。よって、ガスFは二酸化炭素ですね。

 

 

問4 化合物Gの構造式

 アニリン亜硝酸ナトリウムNaNO2が出てきたら「ジアゾ化」ですね。このあと、フェノールと反応させるので、続けて「カップリング」が起きています。

 

 

問5 配向性

 ベンゼン環上に置換基が1つしかない化合物に対して更に置換反応を起こすとき、置換する場所が元々の置換基によって決まる性質を配向性と言います。

 高校の教科書では発展内容として授業では取り上げられることは少ないかもしれませんが、難関校を目指す人たちは一度は聞いたことがあるかと思います。最近、この配向性について知っていないと解けないような問題を見かけるので、これを機に覚えておきましょう。

 

 

問6 配向性の原理

 私は大学2年生の有機化学で習いましたが、問題文にあるような説明があれば高校生でも理解できないことはないと思います。なぜメチル基が電子を与えることができるのか、という点については大学に行ってから学べばよいと思いますが、有機化学を考える上で「共鳴構造」というのは化合物の安定性、反応性にとって重要なファクターです。パラ位の例から考えればさほど難しいものではありません。


 図から分かる通り、オルト位への置換ではメチル基が結合している炭素が正電荷を帯びる共鳴構造があるため、安定化されます。一方、メタ位への置換ではそのような共鳴構造ができないため、メタ位への置換反応は起きにくいと説明されます。

 

 

問7 化合物Dの構造異性体

 ベンゼン環から水素原子1つを除いたものの分子量は77です。残りの分子量は41なので、C3H5-がつくことになります。幾何異性体も区別して書きましょう。

 

 

問8 化合物Iの存在比

 置換基の分子量(原子量)が35または37、青緑色の炎色反応を示すことから化合物Eがクロロベンゼンであることが分かります。よって塩素Cl2同位体比が35Cl:37Cl=3:1であることが分かります。

 化合物Iはジクロロベンゼンであるため、塩素分子Clの同位体存在比のように求めていきます。