【東京大学】2024 化学 第2問 part1

こんにちは。

今回から東京大学第2問を見ていきます。

東大は多くの大学と出題分野の順番が逆になっていることが多い印象があります。今年度も第1問は有機・高分子、第2問が無機、第3問が理論となっていますね。どんな順番であれ、直向きに解いていきましょう。

 

目次

 

問ア 金属A

 両性金属Al、Zn、Sn、Pbが有名ですね。その中でも、硫化水素H2Sによって白色沈殿が生じるのはZnになります。

 亜鉛イオンZn2+と硫化物イオンS2-からなる硫化亜鉛ZnSの結晶構造は「亜鉛鉱型」であり、全てのイオンを炭素原子に置き換えるとダイヤモンドと同じ構造をしています。

 二クロム酸カリウムK2Cr2O7水溶液を加えると黄色沈殿が生じるイオンは後ほど説明します。

 

 

問イ 金属B

 残る両性金属はAlとSn。最後の実験では、硫酸酸性の二クロム酸カリウムK2Cr2O7水溶液によって4価の陽イオンが生成しています。二クロム酸カリウムに酸化されたと考えられますが、Snがニトロ基の還元で使われることを覚えていれば思いつくでしょう。

 

 

問ウ 鉛の反応性

 鉛は希硫酸と反応して鉛(Ⅱ)イオンになります。しかし、硫酸イオンと反応して不溶な硫酸鉛PbSO4を鉛の表面に形成します。これによって、反応が止まります。

 

 

問エ 二クロム酸イオンの平衡

 二クロム酸イオンCr2O72-は水溶液のpHによってクロム酸イオンCrO42-になります。

  Cr2O72- + 2OH- ⇄ 2CrO42- + H2O

 二クロム酸イオンが赤橙色であるのに対し、クロム酸イオンは黄色です。

 

 

問オ クロム酸鉛(Ⅱ)PbCrO4の沈殿

 二クロム酸鉛(Ⅱ)に比べてクロム酸鉛(Ⅱ)の方が溶解度が小さいため先に沈殿します。ここでクロム酸イオンが減ってしまうため、問エの平衡がどんどん右に移動します。よって次々とクロム酸鉛(Ⅱ)が生成します。

 クロム酸イオンCrO42-による沈殿は主に3つです。色も合わせて覚えておきましょう。また、下線④にある通り二クロム酸カリウムが酸化剤としてはたらくと、クロム(Ⅲ)イオンに変化します。クロム(Ⅲ)イオンは緑色です。

 

■クロム酸イオンによる沈殿(3つ)
・鉛(Ⅱ)イオン・・・黄色沈殿
バリウムイオン・・・黄色沈殿
・銀(Ⅰ)イオン・・・赤褐色沈殿

 

 

問カ イオン反応式

 イオンB2+の酸化、二クロム酸イオンCr2O72-の還元の半反応式は次の通りです。

  B2+ → B4+ + 2e-

  Cr2O72- + 14H+ +6e- → 2Cr3+ + 7H2O

 今回はイオン反応式でよいため、電子を消去するだけです。

 

 

問キ ヨウ素滴定

 過マンガン酸カリウムKMnO4と十分量のヨウ化カリウムKIによってヨウ素2が生成します。このヨウ素をチオ硫酸ナトリウムNa2S2O3で滴定することで、生成したヨウ素の量を求め、目的である過マンガン酸カリウムの量を割り出します。

  MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O

  2I- → I2 + 2e-

  2S2O32- →  S4O62- + 2e-

チオ硫酸イオンの化学式、半反応式についてのヒントが一切ないため、自力で引き出すしかありません。「チオ」という接頭辞は、酸素Oを硫黄Sに置き換えるという意味があり、硫酸イオンSO42- から酸素Oを硫黄Sに変換すれば完成です。

 

 

【まとめ】

 今回は無機一色の問題でした。やはり覚えなければ答えへの糸口が分かりにくいですが、推察することで導くことができるものもあります。有機はよくパズルに例えられますが、無機もパズル要素はあると思います。反応式の構築や沈殿などパターン化して勉強しましょう。