【東京大学】2024 化学 第1問 part2

こんにちは。

前回に引き続き、東京大学第1問の後半を見ていきます。

糖に関する問題です。

受験生の中には高分子を十分に演習できずに本番に挑む人も多いのではないでしょうか。高分子は覚えることは少なくないですが、無機のようなグループ分けや、有機のような推察力で乗り越えられます。じっくり見ていきましょう。

 

目次

 

 

問キ C3H6O3の最小単糖

 問題文の2行目「直鎖状飽和炭化水素の全ての炭素原子に1つずつヒドロキシ基が結合した分子が、酸化された構造」とあるため、その通りの構造式を考えていきます。

 まず、「直鎖状飽和炭化水素の全ての炭素原子に1つずつヒドロキシ基が結合した分子」は炭素数が3の場合、グリセリンのみが該当します。このグリセリンを酸化すると、1位のヒドロキシ基を酸化したアルデヒド、2位のヒドロキシ基を酸化したケトンが答えになります。

 

 

問ク 異性体の数

 シクロアルカンの2つ以上の炭素に置換基が結合するとき、環の上下によって異性体が現れることがあります。

 ここで「メソ体」についてお話します。不斉炭素原子を2つ以上もつ分子内に対称面がある場合、鏡に映した化合物が鏡像異性体にならないことがあります。これをメソ体といいます。教科書内ではあまり出てきませんが、資料集や問題集ではたまに目にします。教科書に出てくる物質でメソ体のものがあります。一番有名なのは酒石酸です。酒石酸はナトリウムとカリウムの塩になると「ロッシェル塩」といってフェーリング液の材料して使われています。

 今回、イノシトール自体は不斉炭素原子を持ちませんが、メソ体のように対称性を考えることができます。

 



 

問ケ フェーリング反応を示す構造

 フェーリング反応アルデヒドR-CHOを検出する方法として習いますが、重要なのは、「還元性をもつ物質」であることです。

 よって、化合物C、Dのようにホルミル基がない物質でもフェーリング反応を示します。また、これらの化合物が還元性を示す理由はヒドロキシ基が結合している炭素原子に水素原子が結合しているからです。水素原子が脱離することで二重結合が移動し、還元性を示すようになります。

 

 

問コ プシコースの構造式

 プシコースは図1-4より、フルクトースから中間体Bを経由して生成する化合物になります。

 まず、グルコースからマンノースが生成する過程を考えてみましょう。グルコースとマンノースとでは、図1-5でいう②の炭素原子に結合するヒドロキシ基と水素原子の位置が違います。この変化は、①と②の炭素原子間で二重結合を形成し、中間体Aを生成することで可能になります。この中間体Aはビニルアルコールのような構造をしており、とても不安定であるため、すぐにマンノースに変化するわけです。

 このとき、マンノース以外の構造式を書くことができます。それがフルクトースです。

 同じようにして、フルクトースから中間体Bを考え、そこから生成される構造式を考えます。問コの2行目「プシコースのカルボニル基の炭素原子の位置番号はフルクトースと同じ」ということを考慮すると、プシコースの構造式が書けると思います。

 

 

【まとめ】

 いかがでしょうか。さすが東大と言わんばかりの難問だったかと思います。特に問クの内容は発展として教科書や資料集に記載されているので、ぜひ目を通してください。

 また、問コの図のような構造式は大学で登場する書き方です。普段目にする糖の書き方は「ハース投影式」、問コの答え方のような書き方は「フィッシャー投影式」といいます。高校生の時点で覚えておく必要はないと思いますが、思考力を鍛える上では良問だと思います。繰り返し解いてみましょう。