【東北大学】2024 化学 第2問 part3

こんにちは。

前回に引き続き、

東北大学第2問を見ていきます。

 

今回の内容は、

電離平衡・溶解度積です。

理論化学では最後に登場する

計算で苦戦する人の多い分野です。

 

注意点さえ押さえておけば、

そこまで難しいものでは

ありません。

 

 

目次

 

 

問11 硫化物沈殿

 カドミウムイオンCd2+亜鉛イオンZn2+を含む水溶液に硫化水素を通じていきます。沈殿が生じる場合、それぞれ何色の硫化物沈殿が生じるか、答えられますか?

 硫化物沈殿の多くは黒色ですが、この二つは黒色ではありませんね。よく出てくる硫化亜鉛ZnS白色沈殿、たまに二次試験でお目にかかる硫化カドミウムCdS黄色沈殿です。ぜひ、覚えておきましょう。

 

① 硫化物イオンS2-濃度

 硫化水素H2Sの濃度は1.0×10-1mol/L、pH xの水溶液中の水素イオン濃度は1.0×10-xmol/Lであるため、電離定数に代入して、硫化物イオン濃度をxで表します。

 

② pH 3.0中でのイオン積

 [Cd2+]、[Zn2+]は問題文に記載されています。また、[S2-]は①のxに3.0を代入した値です。ここで、これらの積が与えられている溶解度積よりも大きいか判定します。

 

溶解度積

 難溶性塩ABが水溶液中で以下のように電離し、平衡状態であるとする。

  AB(固) ⇄ Am+ + Bm- 

 この平衡定数Ksp=[Am+][Bm+]を溶解度積という。

 

 そして、ある量の塩ABを水に入れ全て電離したと仮定した場合、次のような現象が起こります。

 

 [Am+][Bm+] > Ksp のとき、沈殿が生じる。

 [Am+][Bm+] ≦ Ksp のとき、沈殿は生じない。(=の場合、飽和水溶液になる)

 

 先に求めた[Cd2+][S2-]、[Zn2+][S2-]がそれぞれの溶解度積よりも大きい場合、沈殿が生じるため、イオン積は溶解度積と等しくなります。

 

③ 片方のみ沈殿するpH

 ①で求めた[S2-]を使ってイオン積を表し、溶解度積よりも大きくなる硫化物イオン濃度を調べます。ここで算出したxの不等式から、その硫化物か沈殿するpHの条件が分かります。一方しか沈殿しないpHを選びましょう。

 

 

【まとめ】

 今回はキリがいいので、問11のみの解説となりました。溶解度積は今回のような硫化物沈殿の問題、そして塩化物イオン濃度を測定する「モール法」が鉄板です。

 最後にモール法について少し説明を加えます。

 

<モール法>

 試料水に含まれる塩化物イオン濃度[Cl-]を硝酸銀AgNO3水溶液で滴定することで求める方法です。指示薬としてクロム酸カリウムK2CrO4を入れます。

 滴定開始時は塩化銀AgClによる白色沈殿が生じます。滴定を進め、塩化物イオンがほとんどAgClとして沈殿すると、クロム酸銀Ag2CrO4による赤褐色沈殿が生じ始めます。このとき、本当に塩化物イオンが沈殿しきっているのか、溶解度積を利用して証明してみましょう。

 25℃におけるAgCl、Ag2CrO4の溶解度積はそれぞれ以下の通りです。

 Ksp = [Ag+][Cl-] = 1.8×10-10 (mol/L)2

 Ksp = [Ag+]2[CrO42-] = 3.6×10-12 (mol/L)3

注意点は、クロム酸銀Ag2CrO4の溶解度積では、[Ag+]を2乗しなければいけないところです。溶解度積はあくまで平衡定数の一種であり、クロム酸銀Ag2CrO41粒から電離する銀イオンAg+は2粒になるからです。

 Ag2CrO4が沈殿し始めた時の各イオン積、[Ag+][Cl-]と[Ag+]2[CrO42-]を求めます。[Ag+]は共通であることを利用して、[Cl-]を[CrO42-]で表します。

 [Cl-] = √[CrO42-]×√0.9×10-8 (mol/L)

クロム酸イオンCrO42-は指示薬であるため少ししか入れません。よって、塩化物イオンが10-8 (mol/L)よりも少ないことから、Ag2CrO4が沈殿し始めたタイミングでは塩化物イオンはほとんど存在しておらず、AgClとして沈殿しているといえます。