こんにちは。
今回も東北大学入試
第1問を解説します。
問題文Ⅱは苦手な受験生が多い
電離平衡です。
じっくり考えていきましょう。
目次
問6 水素吸蔵合金
水素化チタン(Ⅱ)TiH2の体積をV〔cm3〕とします。密度、式量から水素化チタン(Ⅱ)の物質量〔mol〕が分かります。生成するTiH2の物質量と吸収される水素分子の物質量は等しいので、水素の体積をVを使って表すことができます。なお、0℃、1.01×105Paより、気体1molの体積を22.4Lとして計算するといいでしょう。
問7 空欄補充
中和滴定で使用する実験器具を選びます。それぞれ、用途を理解しておくことが大切です。
エ:ホールピペット 体積を正確に測り取ります。
オ:コニカルビーカー 実際に反応を起こす場として使います。
カ:ビュレット 滴定する液体の体積を正確に測ります。
また、実験器具で覚えておくべきことは、①使う前の注意点、②乾燥時の注意点についてです。①正確な濃度を移動させる器具は、使う前に共洗いをする必要があります。その他の器具は水で濡れていても構いません。②体積を厳密に扱う器具は加熱乾燥ができません。
問8 乳酸の質量パーセント濃度
水酸化ナトリウムNaOH水溶液の濃度は操作3より0.100 mol/Lであることが分かっています。乳酸は1価の酸であり、乳酸の物質量を求めることは難しくありません。
注意点は、元の乳酸飲料10mL中の濃度であることです。そこで、30mLの乳酸水溶液の濃度を求めるよりも、ここに含まれている乳酸の物質量を求めた方が薄めたことによるミスを減らすことができる。
問9 乳酸の電離平衡
① 乳酸ナトリウムCH3CH(OH)COONaのモル濃度
乳酸CH3CH(OH)COOHとNaOHの中和は以下の反応式で表すことができます。
CH3CH(OH)COOH + NaOH → CH3CH(OH)COONa + H2O
すなわち、反応したCH3CH(OH)COOH(またはNaOH)の物質量〔mol〕と生成したCH3CH(OH)COONaが等しくなります。溶液の体積は元の乳酸飲料10mLと純水30mL、NaOH水溶液10mLの合計50mLです。これで濃度を求めていきましょう。
② 加水分解定数Kh
酸の電離定数Kaを求めるときと同じ要領です。初めの乳酸イオン濃度C〔mol/L〕、加水分解した割合hを用いて、乳酸イオンCH3CH(OH)COO-、乳酸CH3CH(OH)COOH、水酸化物イオンOH-の濃度を表すと、
[CH3CH(OH)COO-]=C(1-h)
[CH3CH(OH)COOH]=Ch
[OH-]=Ch
これでKhを求めることができます。
③ 乳酸ナトリウム水溶液のpH
hが十分に小さい場合、加水分解定数はKh=Ch2となる。よって、[OH-]=√CKhとなります。このまま常用対数を取るとpOHを出せます。pH+pOH=14より、pHを求めることができます。もちろん、水素イオン濃度を直接求めてからpHを出してもいいです。
【まとめ】
今回は第1問の後半を解説しました。
電離平衡の中でも塩の加水分解でした。新指導要領からは塩の加水分解や緩衝液についてはあまり触れないようになっていますが、これまで通り問題としては登場すると思われます。この内容で注意すべきは、「溶液を混ぜることで起こる体積の変化」です。
例えば、同じ濃度の酢酸CH3COOHとNaOH水溶液を同じ体積で混ぜたとします。ここで生じる酢酸ナトリウムCH3COONa水溶液の濃度は酢酸やNaOH水溶液の半分になります。酢酸・NaOH・酢酸ナトリウムの物質量は全て同じですが、水溶液の体積が酢酸ナトリウムが他の二つに比べて2倍になっているからです。
このように、溶液を混ぜる問題(電離平衡や溶解度積)では体積の変化に注意が必要です。